絲絲雑記帳

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竹林日誌 10前/09後/09前/08後/08前/07秋/07夏/07春/06秋/06夏/06春/05秋/05夏/05春/04秋/ 04夏/04春/03秋/03夏/03春/02後/02前/01/99-0
0/「建設篇」


2月18日(土) インドのクラフトフェア

 首都デリー郊外で開かれていたクラフトフェア「スラジクンド・クラフト・メラ」に行ってきた。
 年に一度、半月にわたって開かれる大がかりな催しだ。
 日本でクラフトフェアと言えば松本だが、こちらはその数倍の規模だろう。
 インド全土から手工芸品や作り手が集まる。
 また、毎年、州をひとつ選び、その特集コーナーも設けられる。ことしはアッサム州だった。

 アッサムと言えば野蚕の宝庫。私たちも一昨年から縁ができる。
 現地で私たちが世話になっている州養蚕局の指導員レヘマン博士も、半月にわたってデリーに滞在し、フェアで野蚕糸の紹介にあたっている。

 私の訪れた日はたまたま休日であった。
 50ルピーというそこそこの入場料にもかかわらず、広大なフェア会場にはデリー市民が殺到。
 どこもかしこもアメ横か新宿駅みたいな状態だ。みんな手工芸に関心があるのか、それともよっぽど他に行く所がないのか。
 インドは養蚕も盛んなのだが、やはり都市住民にとっては珍しいのだろう、ブースの前はいつも人だかりだ。特にアッサム特産のムガ蚕やエリ蚕は注目度が高いようだ。レヘマン博士も昼食を摂る暇もないほど。(写真上に腕だけ登場)

 写真中はエリ蚕の幼虫。
 あまりにカラフルなのでゴム製のレプリカかと思ったが、ホンモノだ。
 エリ蚕の幼虫は、白色ばかりでなく、黄色や緑色もいる。

 写真下はムガ蚕。
 これは初めて見たが、葉っぱを巻き込んで繭を作っている。

 私がわざわざフェアを訪れたのは、別に野蚕を見学するためではない。
 レヘマン博士に会いに行ったのだ。
 私たちにエリ蚕やムガ蚕の糸素材を供給してくれているのが、このレヘマンなのだ。
 糸を作るのは田舎の主婦たちだが、そういう人々とコンタクトをとって直接糸を買うのは不可能に近い。それで蚕糸指導員のレヘマン博士がボランティアで仲介の労を執ってくれているのだ。

 特にエリ蚕糸は、ウールと交織したり、混紡したりで、最近Makiの中でも注目度が高まっている。
 真木千秋も継続的にエリ蚕糸を使いたいというので、この日、レヘマンにしっかり頼んできたというわけ。(金銭の介在しないボランティアだから、かえって難しいところもある)

 今回は、エリ蚕糸と、エリ蚕真綿を注文する。
 特にエリ蚕糸は、品質を統一したいので、紡ぎ手はひとりに限って欲しいと頼む。
 レヘマン博士は例によって快諾するのだが、だからと言って注文通りに行くかは保証の限りではない。
 もうアッサムに帰った頃だろうから、メールでもしてみよう。

 

 

2月11日(土) ヒマラヤン・ホスピタル

 ここドイワラ(ganga工房所在地)のランドマークは、ヒマラヤン・ホスピタルという病院だ。
 著名な施設で、土地に不案内な人はここを待ち合わせ場所にしたりする。
 この病院、じつは私ぱるばと縁があったのだ。
 今から三年ほど前、ここのアユールヴェーダの先生、マンベイ医師が武蔵五日市に来て、数日間、アユールベーダのセミナーを開催したのだ。
 近所に住む知り合いのヨガ教師が招いたもので、私がその通訳として駆り出された。
 こちらも多忙の身(!?)なのだが、他に人がいないと頼まれ、引き受けたというわけ。
 ついでにマンベイ夫妻、竹林を訪れ、ラケッシュのインド料理でランチをしたり、真木千秋もセミナーに一日参加したりした。
 まだganga工房のできる前の話だ。
 アユールヴェーダというのは、インドの漢方みたいなもの。

 その後、何かの縁で、病院のすぐ近所に工房ができる。
 しかし、なかなかドクターを訪ねる機会がなかった。
 十日ほど前、たまたまラケッシュと病院に寄る。ATMがあるので、お金を下ろしに行ったのだ。
 そのときドクターのことを思い出し、病院に問い合わせたところ、その日は既に帰宅したとのこと。
 日を改めて出直すことにする。
 そのことを真木千秋に話すと、今忙しいんだからラケッシュをそんなことで引き回さないで!と叱られる。

 で、沙汰やみになっていたところ、昨日、真木千秋が腰をやってしまった。
 今朝は更に症状が悪化し、ベッドから起き上がれないほどになる。
 そこで思い出したのが、マンベイ医師。
 ラケッシュが電話すると、ほどなく飛んできた。
 こちらのことを良く覚えてくれていて、この奇遇に驚いていた。
 なんでもドクター・マンベイ、聖地デヴァプラヤグの出身だそうだ。ガンジスの上流にあって、私が二度ほど沐浴したところだ。

 その後、ドクターに連れられ真木千秋とラケッシュが病院に行く。
 まずは通常の整形外科でレントゲンを撮るなどして診察を受け、たいしたことはないと判明。
 その後、アユールヴェーダ棟に案内される。
 これが素晴らしい施設だったそうだ。
 パンチャカルマなどアユールヴェーダのセラピーが泊まり込みで受けられる。
 ヨガのホールや、日帰りトリートメントもある。
 雰囲気も瞑想的で、宿泊や食事もかなりの水準で、値段は手頃。
 真木千秋も腰痛が治まったらトリートメントに出かけるそうだ。
 コレを見るために腰をやっちゃったのかも…と真木千秋。


2月10日(金) 或る春の日

 工房を出て散歩すると、そこは麦畑。
 既に穂が出ている。
 麦に混じって、エンドウも花を咲かせている。(写真右上)
 そういえば近所には桃の花も咲いている。
 東京・五日市より二月あまり季節の早い北インドだ。

 日溜まりに小さな機を移動させて、織師ジテンドラが機織りをしている。
 袋物に使うヒモだ。(写真右中)
 素材はヤク・ウールと絹の混紡糸。
 じつはコレ、羊毛と間違えて機にかけてしまったのだ。
 というわけで、ganga初の記念すべきヤク入り織物が、このヒモ。

 陽気に浮かれて踊り出す!? 
 ラケッシュの次姉サンギータ。

 出来上がったばかりのサロン・スカートを試着してもらう。
 生地は木綿カディ。
 ただ、彼女にはサイズが小さいと見えて、あまりサロンぽくない。(インドの既婚婦人は福々しいのが好まれる)
 このような形のボトムを着用することがあまりないので、嬉しかったらしく、ついついステップを踏む。
 サンギータ(梵語で音楽)の名の如く、ダンスが大好き。


 夕方の増満工房。(写真右下)
 gangaウール布を使って、既に四つほど試作品ができている。
 「この立体感が良い。布の感じがよく出ている」と真木千秋。「服も良いんだけど、やっぱりねぇ…」と問題発言も。
 二人でしばしの間、カタチや縮絨のことなど密議を凝らしている。

 かくして、インドの春日も暮れるのであった。
 (増満氏、今19:20も工房の中で一心に針を使っている。ホントに好きみたい)


 

2月9日(木) シヴァ・リンガ

 日本は再び厳寒のようだが、ここ北インドも今日は寒い。
 今朝など霜まで降った。
 日差しは春だが、風が冷たい。インドの三寒四温だ。

 そして、今日は静かなganga工房。
 客人を含め、主要メンバーが五人ほど出払っている。
 ラケッシュ両親の実家のあるヒマラヤ山村に出かけたのだ。

 さてその客人のひとり、増満兼太郎氏。
 造形作家という、私ぱるばにはやや縁遠いジャンルの御仁なのだが、真木千秋も注目の若手である。それで私も注目していると、或る日、街へ出かけて、丸太を買ってきた。
 800ルピーというインドではトンデモのプライス。そんなもん竹林工房にはいくらでも転がっているではないかと怪しんでいると、ノミを使って縁を削り始める。(写真上)。これら工具も氏の持参品である。
 これは良い材だと増満氏。彫刻に適しているという。どうやらただの丸太ではないらしい。ラケッシュに聞くと、これはサンダンと呼ばれ、農具や工具に使われる木だという。そういえば我々も昨年、この木の皮で染色をしたものだ。
 増満氏、作業用の木型を作っていたのだ。
 ちなみに氏の足下にあるのが、自身の作品であるサンダル。実はMakiスタッフ大村恭子がこのサンダルを愛用していて、それが氏とMakiとの最初の出会いであった。

 次いで増満氏、木型を抱きかかえ、ウールのMaki布でチクチク作業。(写真中)

 直立させて作業。(写真下)
 これが何となくインドのシヴァ・リンガを連想させる。シヴァ神の象徴だ。
 増満氏、実は、gangaのために袋物の原型を考えてくれている。
 こうした立体感は、今までのMaki周辺にはなかったものだ。

 革ばかりでなく、金属や映像など守備範囲の広い増満氏。
 初めてのインド世界もきっと多様に体験しているはず。
 今日の山村訪問はいかがであったか。
 12月に予定されている竹林shopでの増満展にどう結実するか、楽しみなことである。

 

 

2月8日(水) 羊毛&エリ蚕・混紡ショール 

 二週間ほど前の1月27日にお伝えしたウールとエリ蚕の混紡糸。
 織師ジテンドラの機にかけて、昨日、最初の試作品ができる。(写真右上)
 色は天然色。デザインは「折り返し織り」だ。

 それをバギラティが洗剤と水を使って、洗濯棒でたたく。(写真右中)

 乾いたところで、谷口隆さんが砧でたたく。(写真右下)

 そうしてできあがり。(写真下)
 ウールだけのショールより、ずっと柔らかで、ふんわりとした触感だ。
 これなら肌の敏感な人でも大丈夫だろう。
 糸が細いので、薄手のショールとなった。重量もわずか95グラムと軽い。

 このふんわり感や軽やかさはエリ蚕の効果であろう。
 またエリ蚕は「冬暖かく、夏涼しい」という特長を持つというから(レヘマン博士)、冬場だけでなく、春や秋など長期にわたって楽しめそう。

 ちなみに、エリ蚕とは、インド・アッサム州周辺を原産地とする野蚕の一種。
 蓖麻(ヒマ)やキャッサバなどの葉を食べる。野蚕の中では繊維が一番細い。
 今回の混紡に使ったエリ蚕は、先日、アッサム州から真綿の状態で送ってもらったものだ。
 ただ、アッサム州は遥かインド東北部の彼方にあり、言語も異なるため、流通&コミュニケーションが難しい。この優れた繊維素材であるエリ蚕をどのように安定的に入手するか、それが大きな課題なのである。

 

2月7日(火) ラダックからの来訪者

 三日前の日誌(2月4日)に、ヤク・ウールの事を書いた。「ヤクの原毛が欲しいので、産地ラダックのウール商ナワン君にメールをした」という話だ。
 そしたら翌日そのナワン君から電話があって、「今、デラドンに来ました」という。
 これはまったくの偶然で、たまたま夫婦で旅行中だったのである。
 そして二日後の今日、可愛い細君と工房に来訪する。

 ナワン君の住むラダックの中心地レー(Leh)は標高3500m。冬場の最高気温はマイナス6℃だというから並大抵ではない。それで、しばし商売を休んで、避寒も兼ねてハネムーンというわけだ。二人は昨夏結婚したのだが、薬剤師である新妻チョルーの勤務地が遠方なので、月に二度ほどしか会えないのだという。(ま、それも新鮮でいいか)
 このナワン君、母語はチベット系のラダック語だが、アメリカ人みたいな英語を喋る。もちろんインド国民だから、ヒンディー語も堪能(に見える)。少数民族ラダック人がビジネスをするには、この三言語が最低でも必要なのだ。

 昨年10月の「竹林shop5周年」を皮切りに、Maki布の素材にパシミナが加わった。
 このパシミナはラダック産で、すべてこのナワン君を通じて入手している。
 ラダックというのは、インド北端カシミール州の東部を占める高原地帯だ。
 そこで採れる繊維素材は、パシミナだけではない。
 ヤクや羊毛、モヘヤ(アンゴラ山羊)まである。

 本人が来てくれたので、話は早い。
 パシミナの在庫が切れてきたので、さっそく注文する。
 それから今回注目のヤク・ウールだ。
 ついでに羊毛も。ラダックには在来の羊のほか、オーストラリアのメリノを導入した毛質の柔らかい羊もいるという。これは興味のあるところだ。

 良い機会だから、ナワン君にganga工房のパシミナ織を見てもらう。織師マンガルの機には、今ちょうどパシミナ糸がかかっている。
 彼の持参したパシミナショールと比べながら、互いにいろいろ検討する。
 糸素材を購入するにしても、Makiは注文量の少ないのがひとつのネックだ。そのせいでいろいろ苦労もある。
 幸い、ナワン君はそうした少量の注文でも応えてくれるようで、有難い存在だ。

 

2月6日(月) ワークショップのいろいろ 
 
 一足お先に春たけなわの北インド。
 畑には菜の花が咲き乱れ、木々には鳥たちがさえずる。
 ついでに、gangaの狭いキャンパスには、いろいろなミニ・ワークショップ(工房)が花盛り。

 上写真は染色ワークショップ。
 沖縄・紅露工房出身の新メンバー秋田由紀子が黙々と作業に勤しんでいる。
 谷口氏の助言を受けながら、今日はウールのスオウ染めだ。(写真上)
 面白いのは媒染剤。スオウはアルミを使って赤系を出すのだが、インドでは「シェービング・アルム」というのを使う。これは何かというと、ミョウバンなのだ。どこでも手に入り、髭剃り後などに広く使われる。インドでは純度の高い天然ミョウバンが産するらしい。このミョウバンがアルミ化合物なのだ。アルムとは英語でミョウバンのこと。
 その髭剃りミョウバンを補助剤として使い、何度も染め重ねて、深い赤が染まった。

 写真2は縫製ワークショップ。
 帰国を明日に控えた図師潤子が最後の追い込みだ。
 今日はカディ(手紡ぎ手織り木綿)布を使ったエプロンを製作している。
 Makiでエプロンを作るのも初めてだろう。
 シンプルなデザインで、台所などの作業に気軽に使えるように企画する。
 ポケットが二つつくらしい。向かって右側のポケットはgangaウール布のハギレだ。
 4月竹林shop開催の「チクチクの春」展にて登場予定。

 そして今日、前庭に突如出現したのが、皮革ワークショプだ。(写真3)
 その主は、造形作家・増満兼太郎氏。
 昨日成田を発ち、今日の昼、工房に到着。さっそく庭に店開きと相成った。

 氏の前に広がるのは、水牛の皮。
 じつはコレ、三日前、真木千秋が首都デリーのマーケットで見つけたものだ。
 増満氏は通常、牛革を使うが、あいにくインドに牛革は流通していない。聖なる動物だから畏れ多いのだ。(ついでに言うとインドのマクドナルドにビーフのバーガーはない)
 同じ牛でも水牛ならOKらしい。
 日本では珍しい素材で、氏も今まであまり扱ったことはないという。
 Makiでは布製のバッグ類も企画しているが、今まで、その取っ手に苦労してきた。氏いはく、この革ならなんとかモノになりそうだとのこと。

 写真下はオマケのワークショップ。
 真木千秋が子供たちに折紙を教えているのだ。
 何を作っているかというと、手裏剣。
 インドの少年たちの間でも「ニンジャ」は有名だ。
 ついでに手裏剣も広く知られている。
 ただし、「シュリケン」とは言えず、もっぱら「シリコン」と発しているみたいだ。

 ところで、今日の登場人物たち、眉間に赤いものがあるのにお気づきだろうか。これはティカと呼ばれる縁起物だ。
 今夜は工房でお祭があって、ヒマラヤの山村から特別に楽士たちを招いているのだ。
 それで全員、ティカで祭化粧をしているというわけ。
 キッチンでは特別料理が準備されている。
 いつか皆さんもご招待…できるかな!?

 

 

2月5日(日) ムガ・ギッチャ

 私ぱるば愛用のシャツがある。
 ギッチャ・シャツという名前だ。
 タッサーシルクのギッチャ糸100%生地で作ったシャツだ。
 二着所持しているが、ひとつはもう二十年も使っている。
 竹林shopでも、よくそのシャツを着用し、店頭に立つ。
 メンズのシャツで、十年前までMakiで作っていた。
 フワッと柔らかく、じつに心地良い。そして木目のような濃淡が美しい。
 なぜ今は作っていないかというと、ギッチャ生地が手に入らないからだ。もう織られていないかもしれない。

 ギッチャ糸というのは、屑繭から手紡ぎされる糸だ。
 かつてはタッサーシルク織物の産地で、ギッチャ糸のみを使った布が織られていた。
 それがここ十年ほど、とんと見かけられなくなった。
 インドも変化しているのである。

 先日、真木千秋が某所からムガ・ギッチャ100%の布を手に入れてきた。
 ムガというのは、アッサム州特産の「黄金繭」だ。
 そのムガ蚕屑繭からムガ・ギッチャ糸が紡がれる。ムガ・ギッチャ100%の布を目にしたのは今回が初めてだ。
 精練していない糸で織られているので、硬質の手触りだ。
 精練というのは絹の保護層である蛋白質セリシンを落とす作業だ。

 そこで客人の染織家・谷口隆さんが、セリシンを落としてくれる。
 苛性ソーダ1%の温湯に生地を漬け、よく撹拌し、二時間ほど放置する。(写真上)。
 セリシンによって溶液が褐色に濁る。

 その後、よく水洗いし、日に干す。
 乾いてから、持参の砧(きぬた)でよく敲く。(写真中)
 手が青く染まっているが、これは藍染の痕跡。
 そして仕上がったのが下写真。
 すっかりソフトになって体に馴染む。タッサー・ギッチャのシャツを5年くらい着込んだ後の風合いだ。

 Makiで使っていたタッサー・ギッチャ布に比べると、色が黄色く明るい。これはムガ蚕の色だ。そして糸も太目。
 インド「本体」では見られなくなったギッチャ布が、遥か遠い東の果てアッサム州では、原料繭こそ違え、まだ織られているのだ。
 写真の布はストールだが、ほかに生地もあって、同じく精練をしてもらった。
 久しぶりにギッチャ・シャツが甦るか!?

 

2月4日(土) パシミナ、ヤク&エリ蚕

 昨日「来gan」した客人。谷口隆さん。染織家。
 織りや染めについて非常に博識なので、今回ご招待申し上げた。
 ご指導頂きたきことは多々あるのだが、まずはウールとシルクを混ぜて糸を作ること。
 ウール&シルクの混紡に関しては、先月来から、ウール&エリ蚕、そしてウール&ムガ蚕で試験的に混紡糸を作っている。
 今日は電動のカーディング(梳毛)機を使っての試作。

 羽子板形の伝統的カーディング器だったら、工房スタッフも慣れている。
 しかし舶来の電動機となると指導が必要だ。
 まずは、パシミナ&エリ蚕の混紡。(上写真)
 パシミナはインド最北端ラダック産、エリ蚕はインド東北部のアッサム産。
 パシミナウールとエリ蚕真綿を、日本から持参した電動のカーディング機にかけ、繊維を混ぜ合わす。

 やはり手動器に比べると電動はラク。
 そうしてできあがった毛絹混合のフリース(綿)を、工房スタッフのバギラティ(上写真の手前人物)がさっそく糸に紡ぐ。
 三十年以上も使っている足踏み式の手紡機なので、その鮮やかな手並みに谷口氏も感心。ちなみにこの手紡機は、織師マンガルが結婚の際にバギラティにプレゼントしてものだそうだ。
 配合比率は半々。長繊維のエリ蚕が入るので、パシミナだけよりも細い糸が紡げる。
 これで来期のパシミナ織りはひと味違ったものになるだろう。

 写真中はヤクウール&エリ蚕のカーディング。
 ヤクというのは、パシミナ山羊と同じく高冷地に棲むウシ科の大型動物だ。濃い茶色の体毛が特長。パシミナと同じくらい非常に柔らかいが、やや張りのある感じ。
 下写真が紡ぎ上げたヤク&エリ蚕混紡糸だ。茶色と白の混じり合いがマーブルケーキのよう。
 ヤクウールはパシミナより繊維長が短いのだが、シルクが入ることによってより細く紡げる。
 その色合いと手触りには真木千秋も至極満足。
 この原毛は日本から持参したものだが、パシミナと同じくインドのラダックで産出する。そこで、さっそくラダックのウール商ナワン君に問い合わせをする。標高3500mのレーはさぞかし寒いことだろう。
 ちなみに谷口氏は既に、ヤクと天蚕の混紡でショールを織っている
 次いで、ウールと家蚕糸の混紡も。
 こんなふうに自分で好みの糸が作れるというのは大きな進歩だ。

 そのほか今日は、パシミナ糸の撚り止め、インド藍の化学建て、野蚕糸の精練などについて教えてもらう。
 これでまたganga工房の織物の幅も広がることであろう。

 

2月3日(金) ganga工房への道

 ここganga工房は、「デラドン」という場所にあることになっている。
 デラドンとはウッタラカンド州の州都で、インド人ならいちおう皆知っている。
 しかしながら、ホントは「ドイワラ」という場所にある。でもドイワラなんて誰も知らないので、デラドンということにしている。

 デリーから北に約250km。飛行機で飛ぶのがいちばん手っ取り早い。
 デリー空港から1日に4〜5往復、運行している。
 だいたいが、アエロスパシアル社のアレニア72という66人乗りのプロペラ機だ。
 所用時間も短いから、ほとんど遊覧飛行だ。

 そして、デラドン空港は、工房から直線距離で2kmほど。
 居ながらにして離着陸が良く見える。
 工房に客がある時には、着陸を見届けてから出迎えに向かえば良い。

 たとえば、今日、真木千秋&客人ひとりが、デリーから飛来。
 ジェットエアウェイ2645便だ。
 定刻より20分遅れて、15時40分に着陸。
 右写真、↓の下にあるのが、その飛行機だ。
 見えるかな? 画面クリックで拡大するとよくわかる。
 その中に真木千秋と客人が搭乗しているわけだ。
 数日間、デリー工房へ「出張」していた真木千秋。年々ひどくなる首都デリーの渋滞と空気汚染から解放され、ホッと一息ついていた。

 




2月1日(水) 山村朝食

 月が改まって2月。
 日本は寒波襲来のようであるが、ここ北インドはすっかり春めいてきた。毎日青空。日中の気温は20℃にも達しようか。

 私ぱるばのganga工房滞在も十日目だ。
 一日三食、ラケッシュ母と妹の手料理を頂戴している。
 元シェフであったラケッシュの母と妹だから、料理の腕も推して知るべしである。とにかく、ウマい!! レストランで食うインド料理とは全然違う家庭料理だ。これはインド人の家庭に侵入しないと食えない。
 朝昼晩と違う料理を作るからさぞかしタイヘンだろうと思うが、最近、朝食で気に入っているのが、コレ。(上写真)
 ヒマラヤ山村の朝食だ。
 丸いのはチャパティだが、色がやや黒い。
 これは、シコクビエという雑穀を使っている。
 ラケッシュ両親の出身地であるヒマラヤ山村では、麦や米はとれない。ヒエやシコクビエが主食となる。ヒエは粒食、シコクビエは粉食だ。(ただ、チャパティにするにはシコクビエだけでは少々難しいので、小麦粉を混ぜている)。
 これが、コクがあり、香ばしくてウマい。
 山村では、このシコクビエのチャパティと、ギー、チャツネが朝食の基本だ。ギーというのは精製バター(上写真右端)で、これは水牛の乳からラケッシュ家で作ったもの。チャツネ(上写真上端)は、コリアンダー、ショウガ、ニンニクの葉、青トウガラシで作ってある。私なぞこれだけで十分満足だ。ラケッシュ祖母によると、これを食していれば病気にならないという。

 かくして今日も元気な工房の面々。それぞれの営みに励んでいる。
 下写真は、染師ディネッシュと秋田由紀子。エリ蚕の手紡ぎ糸をメヘンディで染めている。メヘンディというのはヘナの原料となる木の葉で、Makiでは以前からグレーを出すのに使っている。ウールと一緒に織られて、ケープになる予定。
 左手前はパパイヤの樹。実が幾つか成ってるのがわかるかな。

 

1月31日(火) フン系の友

 私ぱるばは十数年来の褌愛好家である。
 褌とは、言うまでも無く、布素材と最も親密に関わることのできる優れた衣料アイテムだ。
 最近は徐々に同志も増えてきた。そうした同志は「フン系の友」と呼ばれる。
 これは私の造語で、解説するまでもあるまいが、「刎頸の友」のもじりである。

 しかしながら驚いたことに、インドには同様の言葉があるのである。
 それは、「ランゴティヤ・ヤール」。
 ランゴットは「褌」、イヤは「の」、ヤールは「友」。すなわち「褌の友」だ。
 その意味は「幼馴染み」。「竹馬の友」みたいなもんだ。
 インドの赤子は褌をつける。それゆえ、赤子の頃からの友人が、ランゴティヤ・ヤール、褌友達だというわけ。

 日本もそうだったが、インドでも、もともと下着は褌だった。
 上写真は五年前、南インドで撮ったもの。田んぼで働く農夫だ。
 見るからに気持ちよさそうではないか。
 日本の夏もほとんど熱帯だから、みんな斯様な姿で働けば原発など必要もあるまい。

 竹林shopにもときどき褌が在籍するが、それは言わば、私用に作った男物のお裾分けだ。
 このたび、ganga工房に針場もできたことだし、女物も作ろうということになる。デザイナーは不肖、この私。
 私ぱるばが製品のデザインをするなど真木テキスタイル開闢以来だが、それが女性用下着だというのも何かの因縁であろう。

 おそらく私ほど様々な下着素材の人体実験をしてきた人間もあるまい。
 経験上、褌の素材には、薄手の手紡ぎ手織り生地が最適である。インドはそうした生地の宝庫だ。
 ただし、男と女では身体構造が違う。褌の好みも男とは異なるであろう。
 今回、幸いにも、gangaで真木千秋の助手をしている秋田由紀子が褌企画に参加。
 現在、文字通り身を挺して素材やサイズの研究に携わっている。
 思えば幸運な娘である。私が長年に渉って開発してきた選り抜きの手織素材から、毎日一枚ずつ誂えてもらえるのだから。その数、現在、シルクと木綿で六点。
 
 中写真はシルク地を裁断するマスターテーラーのビレンドラ。
 下写真は女物褌の試作。左から極薄綿カディ、タッサーシルク格子、中薄綿カディ、中厚綿カディ。

 




1月30日(月) 細繊度の双糸を求めて (ちょっと専門的)

 今日も休み。
 というのも、ここウッタラカンド州の州議会選挙の投票日で、投票を促すため、州内の事業所はだいたい休みなのだ。
 昨日も日曜で休みだろ、それから、一昨日は祭日、その前々日も祭日…。最近ほとんど働かないインド人である。
 私は勤勉な日本人であるから、無為に日を過ごしたりはしない。
 この州が休みならば、隣州へ行って働けば良いのだ。
 ganga工房があるのはウッタラカンド州。その南にはウッタルプラデシュ州がある。
 今日の話はちょっと専門的になるのだが、記録も兼ねて書き留めておきたい。

 実は、真木千秋の欲しがっている糸があるのである。
 細繊度の双糸。平たく言うと、細い繊維の絹糸を二本撚り合わせた糸だ。
 この糸はマルダ糸という名前で、もう二十年近くデリー工房で使っている。
 原料はマルダと呼ばれる小さな黄繭で、繊維(繊度)が細い。
 その繊維を合わせて一本の糸(単糸)にし、その単糸を二本撚り合わせて一本の糸(双糸)にする。それゆえ細繊度の双糸と呼ぶのだ。上写真の黄色い糸がそのマルダ糸。
 普通の絹糸よりも細く、強度にも優れるので、織物のタテ糸に重宝する。
 この近辺で産する繭(上写真の白繭)からは、やはり繊度の細い繊維が採れる。その白繭から引かれた糸が上写真の白糸だ。ただこれは単糸なので細過ぎ、強度も足りないので、ganga工房では使えない。
 単糸を双糸にしてくれるのが撚糸場だ。そういう場所がないだろうか?

 というわけで、工房の男スタッフ4名とともに車に乗り込み、70kmほど離れた隣州ウッタルプラデシュのチュトマルプールという街までやってくる。
 この街にあるのが、インド繊維省の蚕糸普及所。じつは一昨年の8月にも訪ねたことがある。いかにもインドの古い公的機関というたたずまいだ(写真中)。かなりヒマだったみたいで、私たち五人が訪ねると、所員がみんな出てきて前庭の日溜まりに腰かける。今回は幸い、クマール氏という養蚕普及員がいたので、いろいろ尋ねることができた。(下写真のメガネの人物)。概要は以下の通り;
 デラドンも含め、この辺一帯は養蚕に好適な土地柄だ。主に飼育されているのは二化性の白繭で、中国種である。(二化性というのは年に二度繭を結ぶということ。デラドンにある蚕糸局のカトーリ博士によると中国♂と日本♀のハイブリッドという話だったが…)。繊度は2デニールで、繊維長は1000m。(日本の繭糸は3デニールだからかなり細い)
 私たちがマルダと呼ぶ黄繭は、ニストリ(nistri)と呼ばれる多化性のインド在来種で、繊度は1.7デニール(細い!)、繊維長は400-500m。ウッタルプラデシュ州内では東部のゴラクプールなどに産する。この近辺には無い。
 更に、上記二種のハイブリッドとして、二化性の黄繭が生産される。繊度は1.7〜2.5デニール。繊維長は800m。
 そして肝腎な点だが、ここチュトマルプール周辺に撚糸場はない。それについてはデラドン市内の製糸業者に聞けとのこと。

 それで私たちはデラドンに戻り、やはり一昨年訪ねたことのある製糸業者を訪ねる。白繭から糸を引いているバティヤ氏だ。
 バティヤ氏いはく、ここで作っているのはやはり単糸のみで、双糸にするのはバラナシの撚糸場だということ。バラナシとはここから800kmほどガンガ(ガンジス川)を下ったところにある聖地だ。沐浴で有名。織物業も盛んである。
 デラドンの近所に撚糸場はないという。バティヤ氏は取引先であるバラナシの撚糸場を教えてくれた。その撚糸場では、マルダ黄繭糸など好みの太さで撚糸してくれるという。

 これにて一件落着。
 細繊度の双糸を得るには、Ganga河畔の聖地まで行くしかないらしい。

 





 

1月29日(日) 遊牧民のキャンプを訪ねる

 私ぱるばの毎朝の日課は、犬の散歩。
 ここganga工房には二頭のボティア犬がいる。
 ちょうど一年ほど前、チベット系の遊牧民であるボティア人のキャンプで譲ってもらったものだ。(詳しくはこちら)。
 チベット系の牧羊犬で、もうすっかり大きくなった。
 散歩に連れて行っても、グイグイと綱を引っぱり、かなりの迫力。道行くインド人も一目置く存在感だ。
 左上写真は黒茶ツートンの松五郎。もう一頭は黒一色の熊五郎。二頭一緒にはとても散歩に連れていけないので、今朝は松。一年前はこんなだったとはとても考えられない。

 このチベット犬、最近はインド国内でも人気が出てきたようで、首都デリー在住の知人が一頭欲しいという。
 そこで今日の夕方、工房の男スタッフが連れ立って、近所の遊牧民キャンプに出かける。
 11月から2月までの四ヶ月ほど、ボティア人たちは、工房近くのジャングルに野営する。羊の群と一緒に冬を越すのだ。私たちの使うヒマラヤン・ウールも、このボティア人から買っている。gangaとは非常に縁の深い人々なのである。

 野営地は工房から十数キロ。車がジャングルにさしかかると、「野生象に注意!」の看板が目につく。実際、この辺では象に襲われ落命した人もいる。車を降りてジャングルに分け入る我々の話題は、もっぱら象のこと。付近には象の糞や、倒木が頻々に見られる。
 実は先月、工房スタッフ三名が、ウールの紡ぎ手を探しにこのキャンプを訪れ、至近距離で象に遭遇!! そのときは命からがら疾駆して事無きを得ている。写真右上は「あの辺に象が居たのだ」と指さす工房スタッフ。象の疾走速度は時速40〜60kmだそうだ。(ボルトより速い!)

 ボティア人の野営地はかなりの傾斜面に設けられていた。おそらくは象対策だろう(写真右中・左下)。私たちにウールを供給してくれる羊たちに会いたかったのだが、あいにく遠方で草を食んでいるという。
 今回の目的はボティア犬の子犬なので、さっそく見せてもらう。12月〜1月が出産期なのだ。
 何頭か見せてもらったが、いずれも黒。デリーの知人の希望は松五郎と同じ黒茶ツートンであった。
 それに、ボティア人の希望小売価格が昨年よりかなり高騰していた。インドのインフレはここまで波及!!
 というわけで、今回は購入見送りとなる。
 あのムクムクの子犬としばし遊べると思っていたのに、残念!!

 

1月28日(土) 春のパシミナ

今日は祭日。
Vasant Panchamiすなわち「春の五日目」という目出度い日だ。
インドの旧暦では、今日から春が始まる。
学校や官公庁は休み。
そういえば一昨日も「共和国記念日」で祭日であった。
インドには祭が多いのである。
今日は吉日なので、結婚式も多い。
向かいの家も息子が嫁を迎えるということで、朝から楽隊が繰り出し、にぎにぎしくやっている。(写真上)
インドには騒音という概念がないから、夜間の騒々しさは限りない。

そんな喧噪をよそに、今日も布作りに勤しむganga工房である。
中写真、朝日を浴びるのは昨日までに織り上がったパシミナショール。
素材となるパシミナは、昨年5月に訪れたインド北端ラダックの産。
チャンタン高原という標高4500mを超える高地で遊牧される山羊の毛だ。

このラダック産パシミナを使ったショールは、昨秋「竹林shop5周年」で初めて登場
今回、もう少し大きいのが作りたいと、数枚織り上げたところ。
折り返し織りで、パシミナの色は天然色。
縁の薄紫はログウッドで染める。
68×192cmくらい。

違いはサイズだけではない。
糸も違うのだ。
昨年のショールのパシミナ糸は、ここganga工房で紡いだ。
今回のパシミナ糸は、原毛の産地ラダックで紡がれたものだ。
ganga工房では足踏み式の紡ぎ機を使うが、ラダックでは原始的な紡錘を使って紡ぐ
これは一長一短だ。
ラダック糸のほうが撚りが甘いので、ショールに織り上げた際、手触りがいっそうソフトで、重量も軽くなる。
ただ、撚りの甘い分だけ切れやすいので、製織に時間がかかる。
また、パシミナの使用量も少なくて済む。(非常に高価な素材なのだ)
ただ、原毛使用量の少ない分だけ、防寒性はganga工房糸に譲ることになるだろう。

それからもうひとつ。
工房で紡ぐと、品質と納期が管理できるのである。
ヒマラヤの彼方、ラダックで紡がれた糸は、納期が数ヶ月も遅れたのであった。
ま、インドでは普通のことだけどね。
というか、ちゃんと納品されただけでもラッキーと言わねばなるまい。
2月15日からの「2月の竹林」に登場予定。


 



1月26日(木) 旗日

今日1月26日はインドの祭日。共和国記念日だ。
1950年にインドの憲法が制定された、その記念日。
国民の休日である。
首都デリーの工房では「働いたら逮捕される」とか言って誰も働かない。
しかしながら、ここganga工房では、真木千秋が滞在していることもあって、休日出勤だ。
始業に先立って国旗掲揚および国歌斉唱。

インドの法律により、国旗は綿カディ(手紡ぎ手織り)布で作ると決まっている。
さすがガンディーの建てた国だ。
工房の国旗は、一昨日、ラケッシュが街で購入してきた新品。
ガンディー帽をかぶった私ぱるばが代表して掲揚する。(上写真)
マリーゴールドの花びらが包み込まれており、旗が開くとハラハラ舞い散る仕掛けになっている。
ついでに国歌の作詞はラビンドラナート・タゴールだ。

中写真は午後五時。
夕方の光の中で、真木千秋とバギラティがストールを触っている。
パシミナと柞蚕(さくさん)の交織だ。
柞蚕とは中国の野蚕で、タッサーシルクの近縁種。
日本で良い柞蚕糸が手に入ったので、パシミナとともに織ってみる。
今回は六枚作るが、その第一作が今日マンガルの手で織り上がり、バギラティが仕上げをしたところ。
真木千秋と二人でフリンジを整えている。
柞蚕糸を入れることで、パシミナの柔らかさに野蚕特有の光沢が加わる。

下写真が織師マンガル。
パシミナ柞蚕ショールを織っているところ。
左右でタテ糸の位置が違っている。
これが折り返し織りで、昨日ご紹介したウール&エリ蚕糸の折り返し織りに比べて手間がかかる。
パシミナ糸が柔らかくて切れやすく、柞蚕糸は細くて折り返しが難しいのだ。
ウール織りのスペシャリスト、マンガルの労作だ。
この「折り返しパシミナ柞蚕」は、2月15日からの「2月の竹林」にてデビュー。

 



1月25日(水) ヨガ・ケープ

今日できあがった新しいケープ。
名づけて「ヨガ・ケープ」。
エリ蚕糸とヒマラヤウールで織り上げた。
折り返し織り。

昨春、やはりエリ蚕とウールでケープを作製し、お陰様で好評を頂く。
今回は、エリ蚕の配合比率を変えて作ってみた。
ちなみに、昨日の記事はエリ蚕と羊毛の混紡糸の話で、糸の段階で混ぜている。
このケープはエリ蚕糸と羊毛糸で織ったもので、これは交織と呼ばれる。

サイズは前回より少々長く、ゆったりしている。
色は前回は生成の白だったが、今回はエリ蚕をグレーに染め、秋にも着られるようにした。
エリ蚕糸の効果で、写真のような優雅なドレープが現れる。
なにより、軽くて温かい。
両脇にヒモがついている。(写真下)

名前の由来である「ヨガ」。
これは、真木千秋が毎朝ヨガを実践しているからだ。
まだ寒いのでショールを羽織ってヨガをするのだが、ポーズによってはショールがズリ落ちてしまう。
その点、ケープだと気楽なわけだ。

ま、わざわざケープをしてヨガをする必要もないのだが。
ヨガをしない人も、もちろん大丈夫。
ちなみに、ganga工房に一番近い街であるリシケシは、ヨガの聖地として日本人も多く訪れる場所でもある。

 

1月24日(火) 羊エリ混紡

ganga工房では日々、いろいろ面白い試みが。
たとえば混紡。
異素材の繊維を混ぜて糸を作る。
今日ご紹介するのは、ウールとエリ蚕の混紡だ。
ウールはヒマラヤ地方で遊牧されたもの。
エリ蚕はアッサム州から真綿の状態で送ってもらった。

混紡のためには、まず梳毛器(そもう=カーディング)で梳(くしけず)る。
しかしエリ蚕は長繊維だから、そのままでは梳毛器にかからない。
まず、真綿をハサミでちょきちょき切って、手でほぐす。
その後、両素材を混ぜて、梳毛機で梳る。

上写真は昔ながらの梳毛機を使う糸紡ぎスペシャリストのバギラティ。
前のボウルに入っている綿が、できあがり。
触ってみるとフワフワして誠に心地良い。
これは、グレーの羊毛にエリ蚕を混ぜたものだ。
配合比率は五分五分。
真木千秋いはく「こんな楽しい作業はない。ずっとこれだけやっていたい」。

少量の梳毛なら手でやる方が早い。
量が多くなると、機械で梳毛する。
今回そのために、わざわざ日本から電動梳毛機を運んで来たのだ。

そうしてできた綿から、バギラティが紡いでいく。 (下写真)
エリ蚕は繊維が長いから、ウールだけで紡ぐよりも、だいぶ細い糸が紡げる。
またエリ蚕はそもそも、シルクの中でも最も柔らかい素材だ。
紡ぎ上ががった羊毛エリ蚕混紡糸は、えもいわれぬ柔らかさを湛えている。
「早く織ってみたい!」と真木千秋。
配合比率を変えるなどして、研究中である。

 



1月23日(月) ganga針場の夕べ

インド北部、ganga工房。現地時間18:44。
私ぱるばは先ほど、バンコク経由で到着したところ。

日々変化を遂げる工房。
一番最近の展開は、一画に針場ができたこと。
針場というのは縫製所で、専門のテーラーも二人加入した。
そこにみんな集まり、何やら相談している。

竹林が引っ越したような風景だ。
左から、大村恭子、真木千秋、図師潤子、サリタ(ラケッシュ長姉)、秋田由紀子、ラケッシュ。
カディ(手紡ぎ手織り木綿)のハンカチを作製しているのだ。
薄手のカディを二枚重ねて正方形に縫製する。
そのステッチの検討だ。

ラケッシュの頭上にあるのが温度計。
ただいま20℃。
だから、暖房もないし、扉も開けっ放し。
でもやっぱり冬だから、寒く感じる。(温度計が壊れているというウワサも)
それでみんな、ウールのセーターやパシミナマフラーを使ったりしている。

 






 
1月20日(金) ganga便り「ラナさんの羊」
by 真木千秋

数日前、gangaにラナさんの羊の毛が届きました。

なんともほわっと柔らかい毛の玉が…。
カーディング後、紡ぐ前の状態が左写真の上と下。

左上写真のグレー色は、羊の毛そのままの色です。
白と黒を混ぜて作ったグレーではありません。

細めに紡がれたこげ茶色。(右下写真)
柔らかくてそして濃い色がうつくしい。

註)
ラナさんとは、チベット系インド人のビシャン・ラナ氏。
工房の織師マンガルと同じく、牧羊の村・ハーシル出身。羊群を所有している。
昨年9月にぱるば一行がハーシルを訪れた際、知り合いになる。
詳しくはこちら


1月13日(金) ganga便り「鬱金」
by 真木千秋

久しぶりにヒマラヤ山中の村からラケッシュ母方の祖父母が里に降りてきました。
一年ぶりの再会でした。

ずっと村で暮らしている祖母は、素足にサンダル履き。
孫たちが心配していました。
ですが、祖母はへっちゃらで、「この足があるからごはんが食べられるのよ。畑に裸足ではいるからおいしいウコン(鬱金)やら豆、野菜がたくさんできるよ」と言って笑っていました。

昨日も山から降りてきたばかりなのに、早速gangaの畑で育ったウコンを収穫。(写真上)
これも祖母が去年植えたものです。

収穫後には、仕分けをします。
また植えるものと、ターメリックパウダーをつくるものと。
仕分け作業の後に、また今年のうこんを畑に植えていました。

今日は朝から、染め場の隣でウコンを茹でました。
茹でて、湯が少しさめたら取り出し、鉄の器に重たい鉄の棒で、ひたすら半殺しにしました。(写真下)
明日筋肉痛になりそう。
うこんのいいかおりがただよって…。
それを広げて干しました。

それが完全に乾いたら、粉にして、ターメリックパウダーのできあがり。
インドで最も基本的なマサラ(調味料)です。
毎日のごはんがさらに美味しくなりそう。

まきちあきより

 





1月12日(木) 社名変更

朝、スタジオの電話が鳴る。
発信先表示を見ると0120から始まっている。
「もしもしぃ」
若い男の声だ。周囲の雑音からすると、営業の電話らしい。
「マキ・テキスト・スタジオ様ですか?」
テキスト・スタジオ!?
初めて聞く名前だ。

それで私は応えた;
「テキストじゃなくてテキスタイルです」
勝手に電話をかけてきて相手の社名を間違えるなど言語道断。
カタカナなんだからキミでも読めるだろう。
これでミッションも失敗と心得るべきである。

ま、しかしながら、社名も問題かもな。
テキスタイルなんて英語、使う方が悪い。
織物という立派な日本語があるではないか。
ついでにスタジオもだ。工房で良いじゃないか。
しかるがゆえに、社名変更。
真木織物工房!!

う〜ん…
どっかの山中で、つうが着尺を織っているような雰囲気だな。
ちょっと考えよう。

1月11日(水) ganga便り「メティのチャパティ」
by 真木千秋

冬のインドは緑野菜がとても豊富です。
ganga工房の畑は、また以前より大きくなっていて、毎日穫りたての野菜をいただいています。

今日は、メティ。冬しか食べられない野菜です。(写真右上)
クローバーのような葉っぱに、たくさんの鉄分が含まれているそうです。
少し苦みがあっておいしいのです。
それを小さく切って、全粒粉にアジワインという香辛料を少し混ぜこんで、
メティ・チャパティを焼いもらいました。(写真右下)

朝食はメティチャパティとゴビマタール(カリフラワーとグリーンピースのサブジ)。
お昼にはジョンゴールという雑穀に豆のカレー。
帰国までに太らないようにしたいのですが、むずかしそうです....。

まきちあきより

 






1月10日(火) ganga便り「アーモンド」
by 真木千秋

 ナマステ、みなさんこんにちは。
 1月5日に渡印し、一昨日gangaに移動しました。
 ラケッシュはじめganga工房のメンバーもみな元気です。
 さすが、ヒマラヤの麓、首都デリーに比べて空気が良いです。そして寒い!
 …と思って温度計を見てみると、午後3時頃で18度もあるのです。
 ラケッシュいわく、ヒマラヤからの冷たい風が吹いてくるので寒い、ということ。
 それでも工房のまわりの麦畑はまぶしいくらいきれいな緑色です。

 さて、今日二本、タテ糸をつくりました。
 ひとつは、パシミナのショールのタテ糸です。今から織るともう冬が終わりなのですが、もっと大きいサイズが欲しいという声があるし、実は私も一枚大きいのが欲しいのです。今日のところは4枚分にしました。
 今回パシミナの糸は、ラダックでお願いして、小さなスピンドルで手紡ぎしてもらったものです。それを二本引き揃えて使う事にしました。
 ラダックからやっと届いた糸を管に巻き取っていくと、中にはアーモンドが...。(写真左上)。気づくとそれを巻き取っていた織師のマンガルが、「甘い甘い」と言いながら食べていました。パシミナの糸の芯のアーモンド、ラダックでは貴重品ではないかと思います。タテ糸60~65cmくらいの幅になる予定です。(写真左下)

 もうひとつは、ラックダイで染めたエリシルクと、茜で染めた手紡ぎウール(写真右上)で、幅の狭いマフラーを。
 30cm幅で180cmくらいに織る予定です。これも4枚ほど。
 春に向かって、ウールの割合を減らし、エリシルクをぐっと増やしてみます。(写真右下)

それではまた、お便りします!
真木千秋より




1月8日(日) 蛍石の差し糸

ここ竹林はハギレ市たけなわだが、インドでは真木千秋が布作りに励んでいる。
以下は昨日届いた便りから。

「フルオライト」というストールがある。蛍石という意味だ。
輝くばかりの春繭糸をふんだんに使うので、出来上がった布が蛍石のごとき光沢を示す。それでフルオライト。
そのタテ糸に使う糸々だ。
ヨコ糸なら織りながらいかようにも調整できるが、タテ糸は一発勝負なので相応の気合が必要なのである。

地はグレー。ザクロやメヘンディ(ヘナ)で染めたものだ。(写真右上)
その地色に様々な色を差す。すべてインドまたは日本の草木で染める。(写真右下)
左上から、青紫はログウッド、ピンクはスオウ、赤紫はラックダイ、黄色はフクギ(沖縄)、青はインド藍、緑はフクギ+藍生葉、水色は藍生葉。(この藍生葉は私ぱるばの育てたもの)
糸は、竹林で座繰りした春繭糸、上州赤城の座繰り糸、南インドの家蚕糸、東インドの家蚕黄繭糸。
「ヨコ糸を入れるのが楽しみ♪」と真木千秋。


竹林では囲炉裏が大活躍だが、インドの機場では暖房の主役は火鉢。真っ赤に燃える炭火を入れ、手を暖めながら作業する。
インドにはインドの寒さがあるのだ。
温かいチャイが有難い。

 





1月6日(金) 明日からハギレ市

真木千秋は昨夜無事インドに到着。
今日からデリー工房で布作りを開始だ。
始めのうちは「暖か〜い」とか申していたが、やはり3時間も外で仕事すると冷えてくるようだ。湿気のある寒気である模様。

一方ここ竹林は、冬晴れの中でハギレ市の準備。
寒いけれどもカラッとしていて気持ち良い。
Makiの初売りであるからして、力も入る。

今年のハギレは点数約850。価格は500円〜24,000円。最多価格帯は千〜二千円台で、数枚のハギレのセットになっている。その他、10枚300円というミニハギレも。
福袋は百点。ストール袋が1万円〜1万5千円。服袋が5千円〜1万5千円。袋の口から中がチラッと見えるようになっている。

母屋一階では反物市。(写真下)
80点ほどの反物が通常の約3割引。

その他、沼田みよりさんの靴下や、久々お目見え・飯田さんの椎茸、そして初登場・八重岳ベーカリーのクッキー(写真左)など楽しいものいろいろ。
このクッキーは、ルヴァンで修業した我が友人たちが沖縄で焼いているもので、素材の味がよく生かされている。ご賞味あれ!

 





1月4日(水) 餅の手紡ぎ手織り

明日真木千秋がインドに向かうので、壮行会で餅を焼く。
ま、壮行会じゃなくても焼くのだが、ともあれインドでは食べられない日本の味だ。
特筆すべきは、これは普通の餅ではないということ。
私ぱるばが先日、実家で手搗きしたのだ。
久しぶりに臼と杵で搗いた。
それを、写真のごとく火鉢で焼く。こんがり焦げ目が香ばしい。
やはり手搗きの餅は味が違う。ふくよかで、コシがあって、不均一。
かなりゼイタクな食べ物のような気がするが、考えてみると、数十年前まではみんなコレだったのだ。
なんだか手紡ぎ手織りの布を思い出す。

 


1月3日(火) 迎春2012

謹賀新年!!

様々な情報によると、今年は地球全般において変容の年になるらしい。
Maki Textile においてもその例にもれず、きっと変容の年になることであろう。
更に精進を重ね、もって、微力ながら、世の安寧に資せんと欲するものである。

で、今、いろいろ準備に勤しんでいるところ。
それについてはまた当HPでおいおいお伝え致したい。

というわけで、今年もよろしく!!

(写真はヒマラヤ・冬の朝)

 


 

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