絲のいろいろ

Makiのロゴ にもあるとおり
織物の基本は糸・糸・糸
Makiで使っている糸をご紹介しましょう。
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Akagi 赤城の座繰り糸


 上州群馬・赤城山麓の農村で、繭から昔ながらに手で引かれる生糸。「赤城の座繰り糸(ざぐりいと)
」と呼ばれる。
 農家のおばあさんたちが主な引き手だが、最近では徐々に若い人たちも増えている。

 太さはいろいろ。引き手によっても少々違う。
 赤城の糸にはゆらぎがある。
 手の早さで座繰るので、本来の糸の性質が出てくるのだ。 そして空気と一緒に紡がれる感じ。
 糸によっては、座繰りをしたあと、天日に当てず、室内で一週間ほど陰干しをする上等の糸もある。

 赤城の糸をタテやヨコに入れると、腰があり、まずしっかりした感じに仕上がる。
 そして使っていくと、ほどなく良い風合いになる。
 柔かくなるが、腰がなくなるわけではない。

 最近では9割くらいのストールに赤城の座繰り糸が入っている。量はいろいろだが。 赤城の糸がないとうまく織り上がらない構造のものもある。
 たとえば、空羽(あきは)のストール。赤城を入れることでタテ糸の隙間(空羽)が保たれる。普通の糸では横滑りして、徐々に隙間が消失してしまう。赤城特有のゆらぎのおかげだ。


 赤城の糸を使うことで、家蚕の本当の性質、最高の性質を垣間見ることができる。


 

 

 



手引き糸手引き糸
福木で染めてから藍の生葉をかけた緑と黄緑。上部の水色は生葉のみ。

  糸繰り
薪の火で繭を煮て糸を取る赤城山麓の農婦。 

 
  手織物
赤は西表島滞在中にヒルギで染めた赤城の糸。生成はタッサーシルク。
   

Katia カティア糸

手紡ぎ糸
太カティア糸

手紡ぎ糸
細カティア糸

 タッサーシルク繭から生糸を取る際、繰糸クズが出る。
 たとえば最初に糸口を探す時、一番外側の部分をざっくり引き剥がす。その部分をキビソと言う。そのキビソから手で紡いだのが、細カティア糸。
 またもはや糸が引けない一番内側をビスという。そのビスから作るのが太カティア糸。

 紡ぎ手によって、多種多様なカティア糸ができる。
 またタッサー繭の色も多様なので、色もいろいろ。
 そのぶん、色にも風合いにも奥行きが感じられる。
 ギッチャ糸やナーシ糸と並んで、Makiのお気に入り。初期の頃から様々なシーンで使われている。
 ただ、繊維が短かったり、からまっていたり、 糸カセごとに撚りが違っていたり、今でも苦労は絶えない。

 右側の写真は新作ストール「折り返し織り」に使っているカティア糸二種。
 ベージュのカティア糸(右上)は、タッサー繭そのものの色。太いのもあれば、細いのもある。
 焦げ茶色のカティア糸(右下)はナーシ糸(下記参照)に似た色だが、ナーシとは風合いは異なる。ふっくらと軽く紡がれ、水を通しても縮むことはない。この焦げ茶色は、紡ぐ前に植物系の染料で染めているように思われる。

 ウールとも相性がよく、見た目よりも軽いので、縮ませずにふっくら織りたいときに使う。
 

細カティア糸を紡ぐ。(写真上)
「折り返し織り」に織り込んだ太カティア糸。(写真下)


手織物
   
         

 

 
 インド西部、ベンガル産の家蚕種(桑を食べる蚕)。原種に近く、繭の大きさは小指の先ほど。英名Maldaマルダは西ベンガル州の地名。
 虫が小さいので、吐き出す繊維が通常の家蚕に比べかなり細い。その繊維を引き揃えて撚りをかけ、さらにその撚りのかかった二本を逆撚りしているので、細く、強く、そしてしなやか。

 この糸に出会ったのは今から十数年前の夏。ちょうど私たちがデリーのニルー家に居たときのことだ。ベンガルから男がひとりニルー家に訪ねて来て、袋の中からこの糸を出して見せてくれた。
 私たちは当時、タテ糸にかけられる手引きの絹糸を探していた。そこで試しに工房の機にかけてみたところ、立派にタテ糸として使えたのだった。
 この黄繭の出現により、薄地のストールが織れるようになった。

 私たちの使い方は、セリシン(保護層のニカワ質)を除去せずそのままで染め、織って仕上げする。使うごとに風合いが柔らかくなってくるが、くたっとはならない。
 初めはシャリシャリして立体的な使い方を楽しめ、そのうち芯のあるしなやかな感じになり、それから長く使える。
 別種の糸とも馴染みやすいので、ウールや麻、他の絹糸と交織しやすい。Makiのストールには欠かせない糸。
   
Malda 黄繭糸




手紡ぎ糸

    繭
通常の家蚕繭(左)と黄繭(右)。
繭の小ささがわかる。

手織物

薄地ストールの「マルダ・ウール」。
タテ糸・ヨコ糸とも、大部分が黄繭糸。黄繭以外は、ウール(左側の太いグレーのタテ糸)、普通の家蚕糸(下部ボーダーのグレーのヨコ糸)。


 
         
       

 

 
 
 タッサー繭には、臍の緒のような柄がついている。繭は樹上に結ばれるが、その柄によって、繭を木の枝に固定するのだ。
 繭から生糸やギッチャ糸を引いた後、この部分が残るが、インドの人はそれも無駄にしない。
 たくさん集めて、解舒(ときほぐ)し、紡いで糸にするのだ。
 タッサー繭の中でもいちばん濃色な部分なので、焦げ茶色の糸が紡がれる。
 繭の本体部分とは風合いが異なり、繊維も短く、縮れている。よく撚りをかけないと糸にならない。
 ウールのように綿(わた)にしてから手で紡ぐので、出来上がる糸は太さもまちまちで、撚(よ)りの強いものとなる。色も濃淡それぞれ違う。

 この撚りを利用した織物づくりは楽しい。縮まない絹と織り合わせたり、引きそろえたりすることで、出来上がりに凹凸が出たり、反発が出たりして、面白い表情を見せる。
 布にして使い込んでいくと独特の味わいが出る。ウールとも違う力強い野生の絹だ。身につけてもチクチクしないし、暖かく心地よい。少しづつ光沢も増してくる。
 私たちの一番の人気者ナーシ。このごろではMakiテキスタイルスタジオじゃなくて、Nasiテキスタイルスタジオにしようか!?なんて言っている。
   

Nasi ナーシ糸
手紡ぎ糸

太ナーシ糸

手紡ぎ糸
細ナーシ糸

   
繭

タッサーシルク(レイリー種)の繭。
繭の上部から伸びているのが柄で、そこからナーシ糸が紡がれる。




手紡ぎ糸

ギッチャ糸と同じく、インドの村々で紡がれる。写真は村から機場にナーシ糸が届いたところ。塊によって色、太さ、風合いなどみな違う。
         
         

Giccha ギッチャ糸

手紡ぎ糸

 
 Makiでいちばん良く使われる糸。
 インドの野蚕タッサーシルク(タサール蚕)の穴開き繭からズリ出して紡がれる。
 光沢ある小麦色を呈するが、繭の品種や個体差により、色の濃淡がある。
 手作業で紡がれるので、紡ぎ手によって太さや風合いも異なってくる。
 タサール蚕はインド各地に産するが、Makiでは中部チャッティスガール州産の糸を使用。
 染色を施すことなく天然の色を生かして使われる。

繭から手でズリ出され、ほとんど撚りもかけられていないので、軽くてサラサラした特有の風合いが生まれる。空気が紡ぎこまれたような糸。それを緯糸として織って使っていくとほんとうにその心地よさがわかる。
 色も風合いも自然をそのまま感じさせてくれるような糸。

 糸の組み合わせによっていろいろな使い方ができる。綿×ギッチャで丈夫な座布団地もできるし、ウール×ギッチャであたたかな冬用の布、黄繭×ギッチャで軽くてさらっとしたストール、などなど。
  糸紡ぎ

 かつては上写真のように、太ももの上で軽い撚りをかけるのが一般的であったが、今では下写真のように壺の底で撚りをかける手法もある。

糸紡ぎ

 

   
         


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