| まずは昨日の写真なんだけど、この男の子はイシャーンという名前。
 ニルーの末弟ラレットの長男で、母親は縫製工房の女主人アミータだ。
 
 ついでにもうちょっと説明しよう。
 ニルーには三人の男兄弟がいる。兄のカムレッシュと、弟のウダイおよびラレットだ。
 そのうち弟ウダイとラレットが、ニルーの仕事に加わっている。
 詳しくは拙著に譲るが、かつてニルー自宅の一画で始めた手織の仕事が徐々に成長し、やがて次弟ウダイ、そして夫アジェイを巻き込み、更に末弟ラレットとその妻アミータが加わり、最近では義姉シルパ(長兄カムレッシュの妻)まで関わるという、複合家族産業にまで発展したのである。
 
 弟二人はそれぞれ家庭を持ち、デリー市内にあるニルーの実家に住んでいる。
 その実家の庭先にはマンゴーの巨木がある。
 ちょっと前置きが長くなったが、昨日、そのラレット家に立ち寄った。
 すると庭の芝生で息子のイシャーンが遊んでいる。
 今年九歳になるが、英語で教育を受けているので、私とも会話ができる
  。 
 
										 P : イシャーン、なにしてるの?I : マンゴー拾ってるの。
 P : へえー、すいぶん小さいんだね。
 I : うん、いっぱい落ちてるよ。
 P : あ、ほんとだ。
 I : 木にはもっと大きいのなってるよ。ほら…。(と指さす)
 P : うん、なってるね。
 I : もっと大きくなったら、ウチのおじさんにあげるんだよ。青いままで。
 P : それをどうするの?
 I : おじさんが***にするの。(***はヒンディー語なのだが多分「漬物」)
 P : おいしい?
 I : うん、おいしいよ。
 P : この小さいのは食べられるの?
 I : うん、食べられるよ。ちょっとレモンっぽいけど…。待ってて、洗ってきてあげる。
 (イシャーン、家の中に入り、しばらくして出てくる。手にした皿の上に小さなマンゴーがひとつ。きれいに皮をむいてある。P それをつまんで、おそるおそるかじってみる。確かに酸っぱいが、カリッとした食感が意外に爽快)
 I : どう?
 P : うんおいしい。ちょっとレモンっぽいけど。
 
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  さて今日は千秋&私のインド滞在最終日。今夕には機上の人である。(香およびスタッフ二人は明後日まで
  滞在) そこで朝からニルー家にやってきて、ニルーやアシスタントたちも含め、みんなで最後の打ち合わせだ。
 日曜だから夫のアジェイは暇みたいで、所在なげにリビングを歩き回っている。
 私もヒマだから、さきほど撮った写真を一枚掲載いたすとしよう。
 題して、『ニルー家のバルコニーにて』
 
 これが昨日作った、マンガルギリ製のルンギ(腰巻)である。
 昨晩はこのルンギと甚平の上衣で、インド古典音楽のコンサートに行き、レストランで食事をした。
 (「キミも変わった日本人だなあ」と同行のウダイ。…インド人もビックリ!?)
 
 写真の上衣は、やはりマンガルギリ製のシャツ。(Sorry! 非売品)
 涼しげでいいでしょう。
 
 ま、確かに活動的ではないんだけどね。
 階段を登ったりするときには、少々たくし上げる必要もあるし。
 しかしそんな余分な所作が、また優雅でいいわけだ。
 
  あんまり腰巻談義ばかりだと「いったい何しに来たのか」と疑われるから、もうちょっとマジメな話を。真木香の手がけたストールから、二枚ご紹介しよう。
 
  いずれもナイームの紋織り機から上がったばかりの実作サンプルだ。 一見わかりづらいが、真木香の腕から、二枚のストールが垂れている。
 
 左側は『ハニコーン』(蜂の巣)。
 ワッフル織とも呼ばれ、ベルギー菓子みたいな凸凹のある立体的な構造だ。
 シンプルなグレーに見えるけれども、様々な色を使い、いろんな服にあわせやすい。
 シルクのストールだが、秋にも使えるよう、タテ糸にウールが入っている。
 
 右側は『トウィル』。先日アスラフが紋紙を作っていた綾織だ。
 写真ではよくわからないが、ジグザグに斜めの綾が三種類入っている。
 縮む糸(ナーシ糸など)と縮まない糸(黄繭糸など)を配合し、縮絨によってふっくらとした風合いを出している。
 男女を問わず、秋の初めごろから。
 これもタテにウールが入っているから、ちょっと柔らかくて、巻きやすいタイプだ。
 
 …というわけで、今回の滞在もタイムアップ。
 あと一時間ほどで、空港に向かって出発だ!
 
 
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